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「職場で受けるいじめや嫌がらせから解放されたい」「泣き寝入りせずに、きちんと対応したい」とお考えの方へ。本記事では、職場いじめ・嫌がらせに直面した際の具体的な法的対処法を解説します。証拠の集め方から、会社への申し入れ、さらには訴訟に至るまでの流れを分かりやすく説明。泣き寝入りせず、ご自身の権利を守るための知識と具体的なステップを身につけ、安心して働ける環境を取り戻しましょう。
職場でのいじめ・嫌がらせ、どう対応する?
現代の職場環境では、「いじめ」や「嫌がらせ」といった問題が後を絶たない状況です。厚生労働省が発表したデータによると、令和4年度に総合労働相談コーナーに寄せられた個別労働紛争に関する相談の中で、「いじめ・嫌がらせ」は最も多く、11年連続でトップとなっています。
個人としての尊厳や人格を侵害する「いじめ・嫌がらせ」(ハラスメント)は、決して容認されるべきものではありません。昨年9月には、日本政府が「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定しましたが、企業活動の内部における「いじめ・嫌がらせ」の問題は、組織が直面し、かつ、対応を迫られる最も身近な人権課題と言えるでしょう。
しかしながら、上記の統計データは、実際に具体的な事案が発生した際に、多くの企業が適切に対応できていない現実を示唆しているとも考えられます。そこで本稿では、組織内で「いじめ・ハラスメント」が発生した際に、企業が取るべき対策とその必要性について、全体像を解説していきます。
いじめ・嫌がらせに対する法的な指針
労働契約法第5条の規定により、事業者は従業員が安全かつ健全に業務を遂行できる環境を確保するための配慮を行う法的責任を負います。これと並行して、男女雇用機会均等法、労働施策総合推進法、育児・介護休業法といった法令は、セクシャルハラスメント、パワーハラスメント、マタニティハラスメントが従業員の労働環境を侵害しないように、相談窓口の設置や体制構築といった措置を事業者に義務付けています。
これらの「雇用管理上必要とされる措置」においては、特に以下の3点が重視されます。
- 相談に対応し、効果的に処理するための体制構築
- 問題発生時の迅速かつ適切な対応
- 相談者の個人情報保護および、相談や調査への協力による不利益な取り扱いの禁止
なお、セクシャルハラスメント、パワーハラスメント、マタニティハラスメントに該当しない「いじめ・嫌がらせ」についても、上記指針に準じた対応が、安全配慮義務の観点から必要とされる場合があります。そのため、「いじめ・嫌がらせ」に関する問題への対応体制の整備と適切な処置は、法的な義務であると解釈できます。
さらに、これらの必須措置の実施は、単に法的な義務を果たすだけでなく、投資家による投資判断にも影響を与える重要な要素です。コーポレートガバナンス・コードの原則によれば、上場企業は、従業員が不利益を懸念することなく不正行為などを報告できる内部通報体制を整備することが求められています。具体的には、経営層から独立した窓口の設置や、情報提供者の機密保持、不利益な取り扱いの禁止に関する規律の整備が不可欠です。
また、2023年3月期有価証券報告書より、「人的資本」に関する情報開示が義務化され、人材の多様性確保や育成計画、社内環境整備に関する方針(従業員の安全や健康への配慮方針など)が記載事項となりました。これは、従業員の安全にどのように配慮しているかについて、投資家に対して開示することが求められていることを示唆しています。
このように、内部通報制度などを通じて「いじめ・嫌がらせ」問題に対処するための十分な体制が整備されているかどうかは、投資家にとって重要な検討事項です。従業員一人ひとりが企業の事業活動を推進する主体であることを踏まえれば、働きやすい環境の整備が投資判断において重要となるのは自然な流れであり、企業はこの点を十分に認識した上で、必要な対応を進めることが求められています。
具体的な職場いじめ・嫌がらせへの対応策
ハラスメントやいじめといった問題への対応は、事案を把握することから始まり、詳細な調査、事実の確定とその評価、そして具体的な改善策の実施という4段階を経て進められます。
各段階において、留意すべき基本的な事項について解説します。
(1) 事案の把握
事業主は、従業員からの相談に適切に対応するための体制を整備する義務を負っています。ハラスメントやいじめは、一般的に事業主が把握しにくい性質の問題であるため、万が一事案が発生した場合に、できるだけ早期にそれを認識できるよう、前述のような体制を構築することは極めて重要です。
(2) 事実調査
事業主には、ハラスメントやいじめが発生した場合に、迅速かつ適切な対応をとる義務があります。そのため、事案を把握した際には、事実関係を明らかにするための調査を速やかに開始することが不可欠です。もし、事案を認識しながら調査を怠り、事態を放置した場合には、それ自体が従業員に対する安全配慮義務違反とみなされる可能性がある点に注意が必要です(東京高等裁判所判決平成29年10月26日、労働判例1172号26頁など)。
調査方法には様々なものがありますが、どの手法を用いる場合であっても、以下の点に留意する必要があります。
- 相談者のプライバシー保護
事業主は相談者のプライバシーを保護する義務があります。そのため、誰が相談したのかという情報が、調査対象者に知られないよう最大限の配慮が求められます。事案の性質上、配慮しても相談者が特定されてしまうケースもありますが、その場合は事前に相談者と懸念を共有するなど、適切な対応をとらなければ、相談体制への信頼が失われ、形骸化する恐れがあります。
- 調査対象(争点)の明確化
経験上、事業主担当者が作成したヒアリングメモを拝見すると、調査対象を明確に意識せずにヒアリングを実施した結果、重要な争点に関する調査が不十分になっているケースが散見されます。このような場合、再度ヒアリングが必要となり、調査担当者および調査対象者の双方に負担が増加してしまいます。調査を開始するにあたっては、事前に調査のポイントを明確にした上で臨む必要があります。
(3) 事実認定と評価
どのような事実があったのかを確定する過程では、関係者の供述のみに依拠せざるを得ない場面も少なくありません。そのため、供述の信用性をどのように判断するかが問題となりますが、考慮すべき重要なポイントをいくつか説明します。
- 客観的証拠や明白な事実との整合性
客観的な証拠や明白な事実と一致する供述は信用性が高いと判断できますが、これらに反する供述の信用性は低いと考えられます。なお、供述の一部が客観的証拠と矛盾する場合でも、その一部が調査対象(争点)と関連して重要でない場合には、供述全体を信用できないと判断することはできません。単にその点について記憶違いをしている可能性もあるため、留意が必要です。
- 不利益な事実の自白
自己に不利な事実を認める供述は、原則として信用性が高いと判断されます。ただし、客観的証拠や明白な事実と矛盾している場合、不利益な事実を自白することに供述者にメリットがある場合(第三者をかばうなど)、または供述者自身がそれを「不利益」な事実と認識していない場合などには、例外的に信用性が高いとは言えないことに留意が必要です。
- 供述の変遷
合理的な理由なく供述が変遷している場合は、信用性が低いと判断されます。なお、供述の一部が変遷している場合でも、その一部が調査対象(争点)と関連して重要でない場合は、供述全体を信用できないと判断することはできません。これは、記憶違いをしている可能性もあるという点で、前述の(1)と同様です。
- 供述態度や虚偽供述の動機といった主観的要因
客観的な証拠が存在せず、事実認定が困難な状況に陥った場合、関係者の供述態度や虚偽供述の動機といった主観的な要因に基づいて事実認定が行われることがあります。しかし、これらの要因は、事実認定においてはあくまで補足的な要素であり、これらのみを根拠に供述の信用性を判断することは、誤った事実認定につながる危険性があることに留意が必要です。
(4) 対応と改善
事業主には、ハラスメントやいじめ事案が発生した場合に、迅速かつ適切な対応をとる義務があります。したがって、事案が発生したと認定された場合には、速やかに問題への対処と改善策の実施が不可欠です。前述の(2)の通り、事案を認識しながら事態を放置することは、従業員に対する安全配慮義務違反とみなされる可能性があります。
従業員が安心して働ける職場環境を構築するという観点からは、加害者に対する懲戒処分といった単発的な対応だけでは十分とは言えません。同じ事態を繰り返さないために再発防止策を講じ、かつ、それらの策が継続的に機能しているかを確認していくことが重要です。
職場いじめ・嫌がらせの終結と対策
職場で経験するいじめや嫌がらせは、心身に大きな負担を与え、働く意欲を削いでしまうものです。しかし、適切な知識と対応策を知ることで、状況を改善し、ご自身の権利を守ることが可能です。法的な指針や具体的な解決策を理解し、一人で抱え込まずに行動を起こすことで、安心して働ける職場環境を取り戻し、より充実したキャリアを築いていきましょう。




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